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錦帯橋
2018 / 1 / 29
岩国の現場が近かったので、夏に冬、
雨の日も晴れの日も錦帯橋を眺めることになった。
景色が気に入って、宿も近くにとった。
川の流れ、雨の流れ、人の流れ。
軽く長く、水に弱い木。
重く丸く、水に強い石。
一見、かなりユーモラスな橋だけど、
よく見ると形の中に
全ての折り合いが緩みなく記されている。
あらゆる部分が、
同じ目的に向かってひたむきに手を取り合って、
こんなに真摯な印象のする人工物はなかなかない。
一個人の知恵では及びがたいその精度を見ていると、
身震いがした。
その陰には、橋を幾度も流され、
工夫を重ねてきた人々の苦悩があるのだろう。
この橋がいま自分の胸を打っているように、
自分の仕事も善かれ悪しかれ先の誰かに伝わるだろう。
自分もまた、同じ歴史と大地の上で仕事をしている。
それは鼓舞であると同時に、重圧でもあった。
けれど現場が終わってみると、なんとなく錦帯橋に
「お世話になった」ような気持ちになって、
どこかでお礼を言いたい気がした。
今日も悠々と流れる錦川の上で
遠方からのお客さんを迎えているだろう。
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